美容所・理容所の開設に必要は手続きとは?特定行政書士が解説します

弊所の代表行政書士は美容専門学校にて関連法規の講義を担当していた経験があります。
美容院やヘアサロンを解説するために必要な美容所の許可に関する法規だけでなく、ヘアサロン業界の最新動向にも精通しているため、実践的なコンサルティングが可能です。

美容所とは?

「美容」とは

「美容」とは、パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいいます(美容師法2条1項)。美容師でなければ、美容を業とすることはできません(同法6条)。

美容師は、美容の業を行うときは、次に掲げる措置を講じなければならなりません(同法8条)。
一  皮ふに接する布片及び皮ふに接する器具を清潔に保つこと。
二  皮ふに接する布片を客一人ごとに取り替え、皮ふに接する器具を客一人ごとに消毒すること。
三  その他都道府県が条例で定める衛生上必要な措置

「美容所」とは

「美容所」とは、美容の業を行うために設けられた施設をいいます(美容師法2条3項)。美容師は、美容所以外の場所において、美容の業をしてはなりません(同法7条)。ただし、政令で定める特別の事情がある場合には、この限りではありません(同条但書)。

美容所を開設しようとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、美容所の位置、構造設備、管理美容師その他の従業者の氏名その他必要な事項をあらかじめ都道府県知事に届け出なければなりません(同法11条)。

美容所の開設基準

美容師

  • 美容師でなければ、美容を業としてはならない。
    →美容所の開設者は、必ずしも美容師でなくてもかまいません。

美容師である従業者の数が常時2人以上である美容所の開設者は、当該美容所(当該美容所における美容の業務を含む。)を衛生的に管理させるため、美容所ごとに、「管理美容師」を置かなければならない。
ただし、美容所の開設者が管理美容師となることができる者であるときは、その者が自ら主として管理する1の美容所について管理美容師となることを妨げない。

管理美容師について

管理美容師になるには、美容師の免許を受けた後3年以上美容の業務に従事し、かつ、厚生労働大臣の定める基準に従い都道府県知事が指定した講習会の課程を修了しなければなりません。

講習は都道府県によって異なります。
管理美容師資格認定講習会については、理容師美容師試験研修センターのWebサイトを御確認ください。

床面積

  • 美容の業務を行う1作業室の床面積は、13平方メートル以上であること。
    →面積は内法(うちのり)により算定する。

いすの台数

  • 1作業室に置くことができる美容いすの数は、1作業室の床面積が13平方メートルの場合は6台までとし、6台を超えて置く場合の床面積は、13平方メートルに美容いす1台を増すごとに3平方メートルを加えた面積以上とすること。

客の待合場所

  • 作業室には、作業中の客以外の者をみだりに出入させないこと。
  • 作業前の客を作業室と明瞭に区分された場所(待合場所)に待機させる措置を講じること。

床、腰板

  • コンクリート、タイル、リノリューム又は板等不浸透性材料を使用すること。

洗場

  • 洗場は、流水装置とすること。
    →まつ毛エクステのサロンであっても、「美容所」である以上は洗場が必要です。

採光・照明・換気

  • 採光、照明及び換気を十分にすること。
  • 美容師が美容のための直接の作業を行う場合の作業面の照度を100ルクス以上とすること。
  • 美容所内の炭酸ガス濃度を0.5 %以下に保つこと。

格納設備

  • 消毒済物品容器及び未消毒物品容器を備えること。

汚物箱・毛髪箱

  • ふた付の汚物箱及び毛髪箱を備えること。

消毒設備

  • 消毒設備を設けること。

消毒方法

皮ふに接する器具のうち、かみそり(レザーカット用を除く。)及びかみそり以外の器具で血液が付着しているもの又はその疑いがあるものの消毒は、器具を十分に洗浄した後、以下のいずれかの方法により行なうこと。
  1. 沸騰後2分間以上煮沸する方法
  2. エタノール水溶液(76.9 %~81.4 %)中に10分間以上浸す方法
  3. 次亜塩素酸ナトリウムが0.1 %以上である水溶液中に10分間以上浸す方法
血液の付着していない器具等の消毒は、器具を十分に洗浄した後、上記の方法のほか以下のいずれかの方法により行なうこと。
  1. 紫外線消毒器内の紫外線灯より1平方センチメートルあたり85 μw以上の紫外線を連続して20分間以上照射する方法
  2. 80度をこえる蒸気に10分間以上ふれさせる方法
  3. エタノール水溶液(76.9 %~81.4 %)を含ませた綿もしくはガーゼで器具表面をふき取る方法
  4. 0.01 %~0.1 %次亜塩素酸ナトリウム液(有効塩素濃度100から1000 ppm)中に10分間以上浸す方法
  5. 0.1 %から0.2 %逆性石ケン液(塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウム)中に10分間以上浸す方法
  6. 0.05 %グルコン酸クロロヘキシジン液中に10分間以上浸す方法
  7. 0.1 %~0.2 %両面界面活性剤液(塩酸アルキルポリアミノエチルグリシンまたは塩酸アルキルジアミノエチルグリシン)中に10分間以上浸す方法

その他

  • 美容を行うために十分な数量の器具及び客用の布片を備えておくこと。

法律だけではなく「条例」にも注意が必要

美容所に関する構造設備基準は、美容師法という「法律」だけでなく、美容所を開設しようとする自治体の「条例」も遵守する必要があります。例えば、渋谷区内で開設する場合には渋谷区の「条例」にも従う必要があります。

ここで、「法律」と「条例」の違いについて解説してみます。

法律とは?

法律とは、国会の両議院において可決されたものをいい、日本全国において適用されます。美容所に関する法律としては「美容師法」があります。

条例とは?

条例とは、都道府県や市区町村などの地方公共団体が担当事務について制定できるものです。憲法94条や地方自治法14条1項では、条例は「法律の範囲内で」制定できると規定されています。

美容所に関する条例の場合には、美容師法などの法律の範囲内で、地方公共団体は美容師や美容所に関する事務について条例を制定することができます。

渋谷区であれば、「渋谷区美容師法施行条例」や「渋谷区美容師法施行細則」があり、それらの規定にも従う必要があります。

そこで、「法律の範囲内」かどうかを、どのように判断するかが問題になります。

この点について、徳島市公安条例事件判決で最高裁判所が示した条例の制定範囲に関する判断枠組みがあります。

最高裁判所判例によれば、「法律」と「条例」で規定する事項が重複した場合でも、法律と条例の双方の趣旨・目的・内容及び効果を比較して、両者の間に生ずる矛盾抵触関係の有無をもって条例が法律の範囲内かどうかを判断するというものです。

したがって、上記の基準で法律と条例の規定に矛盾抵触の関係がないと判断されれば、その条例は有効です。

そこで、都道府県や市区町村では、美容師法に矛盾抵触しない範囲で、美容師法よりも更に細かい規定を条例によって規定しているケースが多いです。

ヘアサロン開設手続きは特定行政書士に依頼を!

このページで解説したように、美容所を開設するためには、美容師法だけでなくヘアサロンを開設しようとする地域の条例についても詳しく知っている必要があります。例えば、渋谷区ではOKである構造でも、新宿区や豊島区ではNGであるケースも多くあります。

つまり、地域(区や市などの自治体)によって美容所開業に関する設備のハードルが異なるのです。

地域(区や市などの自治体)によって美容所開業に関する設備のハードルが異なる。

法律や条例を正確に理解した上でヘアサロンの図面を作成しないと、本来は不要な設備を作ってしまうなど余計なコストを負担する危険があります。ヘアサロンのレイアウトを考える際には、図面を示して保健所と事前協議する必要があります。

弊所では、美容師法に精通した特定行政書士がクライアントの代理人として保健所との事前相談を実施します。手続きは専門家に任せて、その他の開業準備に専念することをお勧めします。

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