登録修理業制度がスタート
ガラケーの時代には、携帯電話端末(特別特定無線設備)の修理をする場合、docomo・au・SoftBankなどのキャリア経由でメーカーに修理を依頼することが一般的でした。しかし、iPhoneやAndroid端末などのスマートフォンが急速に普及するにつれて、製造業者以外の第三者である修理業者(スマホ修理業者)が修理や交換を行うケースが増えてきました。
その一方で、その第三者が携帯電話端末を修理することによって、修理後の携帯電話端末(特別特定無線設備)の性能が電波法で規定している技術基準に適合するかどうか不明確になる等の点が懸念されていました。
このような背景を受け、修理の箇所及び修理の方法が適正で修理後の無線設備が技術基準に適合していることを第三者である修理業者(スマホ修理業者)自らが確認できるなど電波法で定める登録の基準に適合する場合には、総務大臣の登録を受けることを可能とする登録修理業者制度が導入されました。
すなわち、「修理業者」として総務省に登録されていない携帯電話修理業者が携帯電話端末(特別特定無線設備)を修理することは違法です。
携帯電話修理業者登録に必要な手続き
2つの法律に対応が必要
携帯電話端末(特別特定無線設備)は、電波法の適用を受ける無線設備であるとともに、電気通信事業法の適用を受ける端末設備であることから、これら2つの法律について、上記の登録修理業者制度が制度化されました。
登録修理業者制度による登録を受けた者(登録修理業者)として修理を行おうとされる場合には、電波法及び電気通信事業法の2つの法律について、それぞれの法律を所管する総務省の部署に対して登録の手続きを同時に実施することが必要です。
登録に必要な書面は、行政書士以外の者が報酬を得て作成することは出来ません。電気通信事業法の登録書面と電波法の登録書面は共通する部分も多いですが、各法律所管の担当部署担当官と打ち合わせを繰り返しながら各法律に合わせて書面を完成させる必要があります。
電波法について
電波法の要件
電波法第38条の40第1項(登録の基準)
総務大臣は、前条第一項の登録を申請した者が次の各号のいずれにも適合しているときは、その登録をしなければならない。
一 特別特定無線設備の修理の方法が、修理された特別特定無線設備の使用により他の無線局の運用を著しく阻害するような混信その他の妨害を与えるおそれが少ないものとして総務省令で定める基準【注】に適合するものであること。
二 修理の確認の方法が、修理された特別特定無線設備が前章に定める技術基準に適合することを確認できるものであること。
【注】総務省令で定める基準
※登録修理業者規則 第3条(妨害を与えるおそれの少ない修理の方法の基準等)
第3条 法第三十八条の四十第一項第一号の総務省令で定める基準は、次に掲げる要件を満たすものであることとする。
一 修理する箇所が、表示装置、フレーム、マイク、スピーカ、カメラ、操作ボタン、コネクタ、バイブレータ、電池その他の箇所であって、電波の質に影響を与えるおそれの少ない箇所であること。
二 同等の部品を用いる修理により技術基準に適合しない電波が発射されないものであること。
三 前二号の規定にかかわらず、製造業者との間の契約等に基づき工事設計及び修理の方法に関する情報の提供を受けた箇所の修理であること。
2 特別特定無線設備の修理の方法は、修理方法書に記載された修理の必要な箇所ごとの修理の方法の手順により行わなければならない。
電波法に基づく申請に必要な書類(登録修理業者規則第 2 条)
ア 申請書 (登録修理業者規則 別表第 1 号)
イ 修理方法書
修理方法所に記載すべき内容は以下の通りです。
(1)修理の手順
(2)修理の確認の手順(登録修理業者規則別表第 2 号に定めるところによる)
(3)測定器等の名称又は型式及び製造業者名
(4)較正等の計画
(5)修理の確認の手順(登録修理業者規則別表第 2 号)及び委託に係る計画
(6)製造業者から情報の提供を受けている内容
ウ 誓約書 (登録修理業者規則 別表第 3 号)
エ 修理体制、管理体制等の管理に関する事項 (登録修理業者規則別表第 4 号)
オ 修理に関し参考となる事項
電気通信事業法について
電気通信事業法の要件
電気通信事業法第68条の4(登録の基準)
総務大臣は、前条第一項の登録を申請した者が次の各号のいずれにも適合しているときは、その登録をしなければならない。
一 特定端末機器の修理の方法が、修理された特定端末機器の使用により電気通信回線設備を利用する他の利用者の通信に著しく妨害を与えるおそれが少ないものとして総務省令で定める基準【注】に適合するものであること。
二 修理の確認の方法が、修理された特定端末機器が第五十二条第一項の総務省令で定める技術基準に適合することを確認できるものであること。
【注】総務省令で定める基準
※認定規則第46条(妨害を与えるおそれの少ない修理の方法の基準等)
第46条 法第六十八条の四第一項第一号の総務省令で定める基準は、次に掲げる要件を満たすものであることとする。
一 修理する箇所が、表示装置、フレーム、マイク、スピーカ、カメラ、操作ボタン、コネクタ、バイブレータ、電池その他の箇所であって、電気通信回線設備を利用する他の利用者の通信に影響を与えるおそれの少ないものであること。
二 同等の部品を用いるものであること。
三 前二号の規定にかかわらず、製造業者との間の契約等に基づき設計及び修理の方法に関する情報の提供を受けた箇所の修理であること。
2 特定端末機器の修理の方法は、修理方法書に記載された修理の必要な箇所ごとの修理の方法の手順により行わなければならない。
3 前条第二項第一号の修理の手順においては、特定端末機器の修理における当該特定端末機器に記録された情報の漏えいの防止のための措置その他情報の管理及び取扱いの方法が明らかでなければならない。
電気通信事業法に基づく申請に必要な書類(認定規則第45条)
ア 申請書(認定規則様式第15号)
イ 修理方法書
修理方法所に記載すべき内容は以下の通りです。
(1)修理の手順
(2)修理の確認の手順(認定規則別表第6号)
(3)測定器等の名称又は型式及び製造業者名(試験の全部を委託する場合は除く)
(4)の修理の確認に使用する測定器等に関するもの
(5)較正等の計画(試験の全部を委託する場合は除く)
(6)に規定する測定器等に関するもの
(7)修理の確認の手順(別表第6号)及び委託に係る計画(試験の全部又は一部を委託する場合に限る)
(8)製造業者から情報の提供を受けている内容(製造業者との契約等により技術基準適合認定番号等に係る設計及び修理の方法に関する情報の提供を受けている場合に限る)
(9)特定端末機器に記録された情報の管理及び取扱いに関する事項
(10)修理を受ける者が不利益を受けるおそれがある事項の説明及び修理の実施に係る同意の取得の手続
ウ 誓約書(認定規則様式第16号)
エ 修理体制、管理体制等の管理に関する事項(認定規則別表第7号)
オ 修理に関し参考となる事項
「登録修理業者制度」の登録手続きについては当事務所へご相談ください。